この記事では肌に対するビタミンCの役割を解説し、さらにビタミンC配合の医薬品についても比較しながら解説していきます。
肌の調子が悪くなったり、ニキビができたりすると
「ビタミンCが足りてないわ〜」と
ビタミンC不足を嘆くわけですが、
ふと、どうしてこんなにビタミンCの効果に絶対的な信頼感を持っているのか疑問に思いました。
もう刷り込みに近いです。
これは一度、ビタミンCとしっかり向き合って正しい評価をしないとただの信者になってしまう…。
ということでビタミンCについて基礎的なことからビタミンC製品についてまで考えてみます。
お肌とビタミンCを考える前に、「美しい肌って何?」「美しい肌になるためのスキンケアってどうしたらいいの?」など美しい肌の条件や美しい肌を手に入れるための方法を知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
ビタミンCとは
ビタミンCはL-アスコルビン酸ともよばれ、強い抗酸化作用をもつ水溶性ビタミンの一つです。
ビタミンCは体内で合成できないので、食事などから摂取しなければいけません。
ビタミンCの役割
ビタミンCは皮膚や細胞のコラーゲン合成に必要なので、ビタミンCが欠乏するとコラーゲン合成が破綻して血管が脆くなり出血しやすくなります。
「学校で習った!」と思う方もいるかもしれませんが、これを壊血病と言います。
また抗酸化作用も有名で、もう一つの抗酸化作用をもつビタミンEと協力して活性酸素各種を消去して細胞を保護しています。
それ以外にも植物性食品に存在する鉄の吸収や免疫機能の上でも重要な役割を果たしています。
ビタミンCの吸収
ビタミンCは小腸からトランスポーター(輸送担体)を介して能動的に吸収されます。
そして吸収されたビタミンCは細胞内・組織内に貯蔵されています。
ビタミンCの組織中濃度や血漿中濃度は厳密にコントロールされていて、適度なビタミンC摂取量ではそのうち70~90%吸収されますが、1 g/日 を上回る摂取量では50%未満しか吸収されません。
ビタミンCの皮膚への役割
コラーゲン形成の促進
ビタミンCはコラーゲン分子の三次構造を安定化させるプロリンおよびリジンヒドロキシラーゼの補酵素として作用し、コラーゲン遺伝子の発現を促進させます。
皮膚のコラーゲン形成は真皮の線維芽細胞によっておこなわれ、基底膜および真皮コラーゲンマトリックスが生成されますが、そこにビタミンCは関与しています。
抗酸化作用
ビタミンCは環境汚染物質や紫外線照射後に見られるような酸化物質を中和したり除去したりすることができる強力な抗酸化物質です。
ビタミンCが皮膚に集中している表皮において特にこの抗酸化作用は重要と考えられていますが、その一方で酵素防御およびその他の非酵素防御を含む抗酸化物質アーセナルの中の1つのプレーヤーに過ぎないとも言えます。
皮膚への酸化的損傷を防ぐためには、ビタミンC単独ではなく他の抗酸化物質と併用することが効果的です。
たとえば抗酸化剤のビタミンEと併用することで、酸化したビタミンEの再生剤としてビタミンCは機能して細胞膜構造に対する酸化的損害を抑制することが知られています。
メラニン色素形成阻害
ビタミンCはメラニン色素の形成を抑制かつ、既成メラニン色素の還元を促進させます。
この効果はメラニン生成の律速酵素であるチロシナーゼの作用を阻害する能力によるものと考えられています。
チロシナーゼによりチロシンはジヒドキシフェニルアラニン(DOPA)へ水酸化さらにDOPAの対応するオルトキノンへ酸化されますが、ビタミンCはこのオルトキノンを還元することでメラニン生成阻害効果が発揮されます。
細胞シグナル伝達経路への作用
たとえばin vitroの研究で、機序は不明ですがビタミン C がケラチノサイト(表皮角化細胞)の分化に役割を果たすことが明らかになっています。
またビタミンCはコラーゲン合成促進作用に加えて、ビタミンCは皮膚線維芽細胞の増殖と遊走を増加させる可能性も示唆されています。
さらには細胞の生存と組織のリモデリングに関わる数百もの遺伝子の発現を制御する代謝センサーの低酸素誘導因子(HIF)-1の安定化と活性化を調節するとも言われています。
そしてビタミンCはエラスチン合成や細胞外マトリックス形成の一部としてのグリコサミノグリカン合成、DNA修復に必要な抗酸化酵素の遺伝子発現にも関与している可能性があります。
このようにビタミンCは酸化的に損傷した塩基の修復を増加させることや遺伝子発現の変調させることが示され、紫外線曝露から保護する能力に重要な役割があると考えられています。
エピジェネティクスな経路に関与
DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステムのことをエピジェネティクスと言いますが、異常なエピジェネティック変化はがんの進行に関与していると考えられています。
ビタミンCはこのエピジェネティクスな制御にも関与していると言われています。
以上のようにビタミンCは肌にとってなくてはならない栄養素であることがわかります。
一方で、「ビタミンCが皮膚にとって欠かせない」ことと、「ビタミンCを多く含む食事やビタミンCのサプリメントの摂取が肌にいい」ことは同意ではありません。
要するにビタミンCたくさんを摂取すれば肌に「効く」というにはエビデンスが必要となります。
たとえば、ビタミンCを何mg、何日間、どういった方法で摂取すると皮膚にとってどういった効果がどのように、どの程度得られるか?というエビデンスが必要となります。
ということで、
ビタミンCを摂取することで肌にどういう効果が得られるかエビデンスを踏まえながら見ていきましょう。
ビタミンCの皮膚に対する効果とそのエビデンス
日常生活のなかで皮膚の構造・機能・外観はさまざまな影響を受けています。
たとえば加齢による肌の弾力性低下やシワの形成、いろいろ環境曝露による変色、乾燥、シワの促進などがあります。
さらには酸化性のある美容・洗浄剤(染毛剤、石鹸、洗剤、漂白剤)などの暴露による化学的ダメージや、傷や火傷などの直接的なダメージもあります。
このような肌のダメージに対してビタミンCの効果が期待されています。
では実際にはどの程度の効果があるか見ていきましょう。
皮膚の老化
自然老化の過程によって皮膚の構造および機能は、他の組織と同様に変化しますし、皮膚病や皮膚がんの発症など様々な障害や疾患に対する感受性が高まります。
そしてみなさんがご存知のとおり加齢による皮膚の外観の変化は、老化の最初の目に見える兆候でもあります。
そして私たちはこの老化という外見の変化に日夜抵抗しているわけであります。
この皮膚の老化は単に時間の経過によって引き起こされる「自然老化」と、外部からの影響による「環境老化」の2つの異なるプロセスに分けて考えることができます。
喫煙や環境汚染物質の暴露といった生活習慣は環境老化の主な要因ですし、慢性的な太陽光の紫外線曝露もまた皮膚の機能や外観を早期に損傷させる主要な環境要因になります。
特に太陽光による老化を光老化といいます。
環境老化による変化は自然老化による変化と重なるので、なかなか両者をはっきり区別することは難しいです。
ただ自然老化はゆっくりとしたプロセスで進むので、高齢になるまで明らかな変化はありません。
具体的な皮膚の老化として、真皮層の厚さの減少、線維芽細胞や肥満細胞の減少、コラーゲン産生の減少、血管新生の減少などが挙げられます。
より具体的にいえば、老化により細胞外マトリックス成分、特にエラスチンとコラーゲンが徐々に劣化していき、皮膚の弾力性と張りが低下してしまいます。
また老化するとヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンが失われ、それに伴い保水能力が低下してしまいます。高齢者に見られる乾燥肌はこれが原因です。
自然老化は仕方ありませんが、喫煙、栄養不良、日光への慢性的な暴露など環境老化に注意すれば皮膚の早期老化を緩和することは可能です。
皮膚老化に対するビタミンCの効果
ビタミンCの自然老化を抑制する能力と、環境老化を防止する能力を区別して評価することは極めて難しいです。
少なくともビタミンCの欠乏が明らかな皮膚障害を引き起こすということは過去のデータからはっきりしています。
たとえばビタミンC欠乏による壊血病の初期徴候には、皮膚の脆弱性、捻転毛、創傷治癒不良などが認められます。
ビタミンC欠乏による機能低下は、ビタミンCの摂取量を増やすことで防げると考えられますが、ビタミンCの血中濃度や摂取量と皮膚の加齢変化の関連を測定した研究はありません。
ビタミンC単独のデータはありませんが、栄養と外見に関する最近の研究の系統的レビューによると、ビタミンCが多く含まれる果物や野菜の摂取量と皮膚の弾力性、顔のしわ、肌荒れ、色の測定値の改善と関連しているというデータがあります。Pezdirc K. et al. Nutr. Res. 2015 ; 35: 175–197.
別の論文ではdouble-blindの試験データがあるので紹介します。Bertuccelli G. et al. Exp Ther Med. 2016 ; 11 (3) : 909-916.
パパイヤ発酵エキス(FFP)(ビタミン、ミネラル、アミノ酸各種含有:ビタミンC,27mg/100g)と抗酸化カクテル(トランスレスベラトロール10mg、セレン60μg、ビタミンE 10mgおよびビタミンC 50mg)のdouble-blind試験。
対象:皮膚の老化の兆候が目に見える40~65歳の健康な人(60人)。
摂取量:1日9gの試薬を90日間、連日服用。
期間:服用90日間の前後の比較。
抗酸化カクテルを90日間服用しても肌の保湿、弾力性、色調などに変化はありませんでした。
その一方でFFPの90日間服用では肌の保湿(皮膚水分計で約2倍)、弾力性(わずかだが有意差あり)、色調の改善が認められていました。
個人的な見解ですが、ビタミンC単独や抗酸化カクテルだけで肌の老化を改善させることは難しいと思います。
FFPは肌の保湿を改善させていますが、TEWLなど一般的な保湿効果の評価は行われていないのでどうなのでしょうか?なんとも言えません。
ちなみにFFPは次の商品です。
紫外線照射と光老化
環境老化の主な原因は太陽光による慢性的な紫外線曝露だと言われています。
紫外線を浴び続けることにより皮膚の細胞外マトリックス成分がダメージを受けて、皮膚の構造や機能に影響してしまいます。
さらに紫外線のダメージの修復にビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質が繰り返し利用され、消耗することで皮膚の防御機能が破綻してしまう可能性があります。
紫外線を急激に曝露するのと慢性的に曝露するのとでは紫外線によるダメージの特徴が違います。
急激な紫外線曝露は日焼けを引き起こし、赤み・腫れ・熱感を伴う大規模な炎症反応です。その後、色素沈着の変化、免疫抑制および真皮細胞外マトリックスの損傷が起こると言われています。
一方で長期間、慢性的に紫外線を曝露し続けると、皮膚構造の破壊を伴う皮膚の早期老化が引き起こされ、皮膚がんの原因にもなります。
この光老化と呼ばれる早期老化の最も顕著な特徴は、しわ、色素沈着、皮膚の弾力性の著しい変化であり、皮膚のたるみの原因となり、加齢とともにこの特徴は顕著になります。
光老化の影響は皮膚の表皮層と真皮層の両方とも影響を受けやすいですが、最も深刻な変化は真皮の細胞外マトリックスで起こります。
具体的には、真皮内でのコラーゲン線維が著しい損失するだけでなく、真皮-表皮接合部でのコラーゲン固定線維が失われます。
光老化は表皮の萎縮、バリア機能の低下も引き起こしますし、さらには老人斑や肝斑として知られる色素沈着を起こすこともあります。
光老化の有害な影響から皮膚を保護するために紫外線を曝露を避けつつ、日焼け止めを使って紫外線を遮断することが勧められます。
ただし日焼け止めは肌に合ったものを選ばないと、皮膚のバリア機能の破壊や炎症の誘発などを引き起こすかもしれないので、注意して選んでください。
光老化と紫外線ダメージに対するビタミンCの効果
in vitro、in vivoの動物実験ではビタミンCの抗酸化作用による紫外線ダメージに対する防御効果が示されています。
ヒトの研究でもビタミンCとビタミンEの酸化防止剤とプラセボのdouble-blind試験で紫外線に対する防御効果が示されています。Eberlein-König B. et al. J Am Acad Dermatol. 1998 ; 38 (1) : 45-48.
対象:10人の被験者
摂取:ビタミンC 2gとビタミンE 1000 IUまたはプラセボのいずれかを8日間、毎日服用。
効果:治療前後の最小紅斑線量(MED)を比較
結果:ビタミンを摂取–MEDの中央値が80から96.5 mJ / ㎠(p <0.01)に増加、プラセボ–80から68.5 mJ / ㎠に減少。
効果があると言ってもSPFとしては1.2程度の効果になります。
別の論文でもSPF約1.8の効果があると報告されています。Fuchs J. et al. Free Radic Biol Med. 1998 Dec;25(9):1006-1012.
この論文ではそれぞれのビタミンC単独では効果はなく、ほかの抗酸化剤を併用することで効果が発揮されることも報告されています。
一方でビタミンCの外用薬の局所投与でも紫外線の防御効果はあるとされています。
ビタミンC、Eに加えフェルラ酸のコンビネーションで塗布することでSPF4弱点の効果になる可能性があります。Lin FH. et al. J Invest Dermatol. 2005 ;125 (4) : 826-32.
ただビタミンCの皮膚への塗布による効果について有力な論文はあまりないので、個人的には無理してまで塗布する必要はないと思っています。
また食事などで十分にビタミンCが補給されて、すでに最適な状態にある場合にはビタミンCを塗布しても吸収されないとも考えられていて、ビタミンCは食事などで内側から補給することが重要とされています。Marini A. et al. Hautarzt. 2011 ; 62 (8) : 614-617.
ドライスキン
多くの人が経験するであろうドライスキン。
これはもともと年齢を重ねるにつれ、皮膚の水分含有量または皮脂生成が減少してしまうことが原因であると考えられていました。
しかし、現在は角質層の角質化プロセスと脂質含有量の変化が原因である可能性が高いと考えられています。
具体的には…
・角質層の主要な細胞間脂質(皮膚バリア脂質)であるセラミドの欠乏
・水と結合して角質細胞が水和された状態を維持できるようにする天然保湿因子(NMF)の減少
・アクアポリン水チャネルを介する表皮の水分ネットワークの欠損
ドライスキンのメンテナンスの基本は保湿になりますが、これについてはこちらの記事を参考にしてください。
ドライスキンに対するビタミンCの効果
ビタミンCが皮膚のバリア脂質産生を促進し、ケラチノサイトの分化を誘導することがin vitroの研究で示されていることから、ビタミンCは角質層の形成に関与することで皮膚の保湿に影響すると考えられています。
ただ臨床研究でビタミンCの使用により保湿効果が得られるといった明確なデータはありません。
しわ
しわは老化の過程で形成され、そのプロセスは紫外線の暴露や喫煙などの外的要因によって著しく促進されます。
コラーゲンの損失やコラーゲンおよび弾性線維の劣化、および真皮-表皮接合部の変化により皮膚の下部・真皮層が変化することで、しわが形成されると考えられていますが、特定の分子メカニズムについてはほとんど知られていません。
しわに対するビタミンCの効果
しわに対するビタミンCの研究は他の抗酸化剤などを配合した外用剤を使用していますが、しわの減少効果は証明されていません。
現時点では、しわの形成を防ぐためにはビタミンCの体内濃度を改善して、コラーゲン合成を促すことが重要と考えられています。
ただこの根拠は、煙者・禁煙者・非喫煙者の血漿中ビタミンC濃度と創傷治癒・コラーゲン合成の関連性から推察されたものなので、なんとも言えません。
しわに関してはビタミンCよりも紫外線対策や禁煙が重要になってきます。
以上、ビタミンCの効果についてまとめてきましたが、ビタミンCはどのように摂取すればいいのでしょうか?
ここからはビタミンCの摂取方法について考えてみたいと思います。
ビタミンCの摂取(食事)
ビタミンCの1日必要量
ビタミンCをほとんどまたは全く摂取しなかった場合(10 mg/日未満)には壊血病と呼ばれるビタミンC欠乏症になることが知られていますが、現代でこのような欠乏症になることは稀です。
一方、心臓血管系の疾病予防効果や有効な抗酸化作用は、血漿ビタミンC濃度が50μmol/L程度であれば期待できると考えられています。Gey KF. Biofactors. 1998 ; 7 (1-2) : 113-74.
ビタミンCには推奨栄養所要量(RDA)が定められていて、基本的にはこのRDAを目標にしていきます。
※RDA:ほとんどすべての(97~98%)健常人が栄養所要量を満たすのに十分な平均1日摂取量
成人(19歳以上)のビタミンCのRDA
・男性90mg
・女性75mg
・妊婦85mg
・授乳婦120mg
※喫煙者は非喫煙者よりもビタミンCを35mg/多く摂取する必要があります。
喫煙者だけではなく高齢者でもビタミンC不足になることが報告されていますので、しっかり食事などでビタミンCを摂取していきましょう。Brubacher D. et al. Int J Vitam Nutr Res. 2000 ; 70 (5) : 226-237.
また女性のRDA75mgでは不十分で100mg必要というデータもあります。基本的には100mgで過量摂取になることはありませんので、100mgを目標に食事をとっていきましょう。Levine M. et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 ; 98 (17) : 9842-9846.
ビタミンCを多く含む食べ物
「ビタミンCを摂取しましょう!というけど何食べればいいの?」
みなさんがイメージするとおり、果物と野菜が最もすぐれたビタミンCの供給源になります。
柑橘類やトマト、キャベツ、ブロッコリー、じゃがいも、他にも多くのフルーツにはビタミンCが多く含まれています。
ビタミンCは水溶性で熱によって破壊されるので調理法には注意が必要ですが、幸いビタミンCを多く含む果物や野菜は生で食べることが多い食材です。
できるだけ1日に5品の異なる果物や野菜を食べてビタミンC摂取を心がけましょう。
ビタミンCの摂取(サプリメント)
「ビタミンCは食事から」といってもそうはいかない方もいるでしょう。
そんな時はサプリメントに頼りにすることになります。
サプリメントはいろいろありますが、どの商品がいいかといったデータはありませんので、インターネットや雑誌などのランキングなどもあてにはなりません。
成分がいくら100mg以上あるサプリメントであっても消化管で溶けて、体内に吸収されないと意味はありません。
ただサプリメントの溶解性や吸収性を公表しているメーカーはないので、何を基準に選んだらいいでしょうか?
一つの基準にGMPを取得している工場で製造しているか確認するといいと思います。
GMP
GMP「Good Manufacturing Practice」の略で、製造所における製造管理、品質管理の基準のことです。原材料の入荷から製造、最終製品の出荷にいたるすべての過程において、製品が「安全」に作られ「一定の品質」が保たれるよう定められております。
GMP認定工場では、次のような品質管理が厳密に行われています。
・正しい原材料が使用されているか。
・製品に含まれている量は正確か。
・衛生的か(施設や作業員の衛生状態など)
・異物の混入はないか。
・設計どおりの内容か。
・均質か。
・賞味期限内の品質は保証されるか。
・製造と品質管理に関する記録が規定どおりに作成・保管されているか。
・規格外の製品が出荷されないためのチェック体制が整っているか。
など
GMPを取得している工場は一定の安全性が確保されていると考えることができます。
日本の製薬業界で義務化されているGMPですが、アメリカではサプリメントも義務化されています。
一方、日本のサプリメントでは義務化されていないのでGMP認定工場で製造されているということは商品を差別化できますので、商品を選ぶ基準にしてもいいと思います。
GMP以外にサプリメントを選ぶ基準はあるでしょうか?
選ぶ基準はありません
ビタミンCのサプリメントを選ぶにあたり明確な基準はありません。
ただ効果がはっきりしないものであることは認識しておく必要があります。
このことを常に認識していれば高価なサプリメントに手を出して失敗することもないと思います。
あくまでも補助であることは忘れてはいけません。
それを踏まえると…
高濃度ビタミンCサプリメントとかリポソームビタミンCサプリメントとかにも過度の期待はしなくなると思います。
後述しますが、どんなに高濃度だったり、吸収性が高くても、1日200mg程度の摂取量を超えると組織のビタミンCは飽和してしまい身体の外に排出されてしまいます。
ようするに余分にビタミンCを摂取しても溢れて、外に出てしまうのでもったいないだけです。
言い換えれば中毒にもなりにくいのでメリットとも言えますね。
要するに無理なく続けられる値段のビタミンCサプリメントを選べばいいと思っています。
他のビタミンとの併用
紫外線対策として抗酸化作用を期待する場合、紹介した論文にもありましたように他の抗酸化剤を併用しないと効果は期待できません。
たとえばビタミンE。
「考えるのが面倒くさいし、マルチビタミン・ミネラルでいいか、いろいろ補給できるし」と考える方もいるかもしれません。
ただ他にもサプリメントを飲んだり、食事に偏りがあったりすると一部の栄養素が過量になる可能性があります。
特にビタミンAや鉄の過剰摂取は注意が必要です。喫煙歴のある方のビタミンA摂取は肺がんリスクになりますし、鉄欠乏性貧血でないかぎり(この場合医師の診察が必要ですし)男性は鉄分を含むマルチビタミンは摂取してはいけません。
もちろん胎児にも影響しないように 妊婦さんのビタミンA過剰摂取にも注意が必要となります。
どんなサプリメントを選ぶにしても必要以上のものは摂取しないことが鉄則だと思いますし、そもそも食事からしっかり摂取できればサプリメントは必要ありませんので。
ビタミンCの摂取(医薬品)
サプリメントとはあくまでも食品扱いで、効果を保証するものではありません。
老化による色素沈着に対する効果を期待したいのでしたら医薬品の方が効果を期待できます。
病院で受診して医師から的確な診断をしてもらい、処方してもらうことが一番だと思っていますが、厚生労働省は医療費の抑制を進めていて、皮膚疾患へのビタミンCの処方は保険適応外となり自費になってしまう可能性があります。
処方薬
ハイシー顆粒25%
有効成分(アスコルビン酸250mg/本剤1g)
適応症(皮膚疾患として)
・肝斑・雀卵斑・炎症後の色素沈着
・光線過敏性皮膚炎
投与量
アスコルビン酸として、通常成人1日50〜2,000mg(本剤として0.2〜8g)を1〜数回に分けて
これは純粋にビタミンCだけの医薬品です。
これにプラスアルファされたのがシナールです。
シナール配合錠・シナール配合顆粒
有効成分(1錠/1g中)
有効成分 | 含量 |
---|---|
アスコルビン酸 | 200mg |
パントテン酸カルシウム | 3mg |
適応症(皮膚疾患として)
・炎症後の色素沈着(ざっくりとしてますね)
投与量
通常成人には1回1〜3錠又は1〜3gを1日1〜3回(アスコルビン酸として、1日200〜600mg)
アスコルビン酸に少量のパントテン酸カルシウムを併用することで、血中・副腎中濃度が増大することや、皮膚機能に及ぼす効果が増強され ることが知られています。
ただ残念ながらアスコルビン酸は酸性、パントテン酸カルシウムはアルカリ性のため、両剤の配合使用は禁忌とされていました。
シナールは製剤上の工夫によりこの課題をクリア。
多くの皮膚科ではこのシナールが処方されているのではないでしょうか?
「忙しくて毎回受診できないんですけど」という方もいるかと思います。そんな方にはOTC医薬品をおすすめします。
受診せずに購入できるOTC医薬品には処方薬と同程度の効果が期待できるものもあります
OTC医薬品
ハイシー1000
成分量(4g/2包中、1日最大服用量)
成分 | 含量 |
---|---|
ビタミンCとして | 2,000mg |
アスコルビン酸(ビタミンC) | 1,000mg |
L-アスコルビン酸ナトリウム | 1,124.79mg |
リボフラビン酪酸エステル(ビタミンB2酪酸エステル) | 12mg |
投与量
15歳以上には1回1包を1日1〜2回(アスコルビン酸として、1,000〜2,000mg)
効能(皮膚疾患として)
・しみ、そばかす、日やけ・かぶれによる色素沈着の緩和
処方薬ハイシー顆粒の販売元、武田薬品の子会社が販売しているので品質には問題ないと思います。
ビタミンCの一日量が2,000mgと身体の必要量の10倍と多めに設定してあり、そこまでの量がいるのかなぁという印象はありますが、それ以外は特に問題ありません。
ハイシーホワイト2
成分量(4錠中、1日服用量)
成分 | 含量 |
---|---|
アスコルビン酸(ビタミンC) | 600mg |
d-α-トコフェロールコハク酸エステル | 50mg |
L-システイン | 160mg |
パントテン酸カルシウム | 30mg |
リボフラビン(ビタミンB2) | 12mg |
投与量
15歳以上には1回2錠を1日2回(アスコルビン酸として600mg)、7歳以上15歳未満は1回1錠を1日2回(アスコルビン酸として300mg)
効能(皮膚疾患として)
・しみ、そばかす、日やけ・かぶれによる色素沈着の緩和
ハイシー1000と同じ効果を謳ってますが、こちらの方がビタミンCの量が少ないですが、ほかの成分が含まれています。
メラニンに対して作用するL-システインや抗酸化作用を持つビタミンE、肌の代謝に関与するビタミンB群…。
抗酸化作用や肌の代謝の正常化を期待するならハイシー1000よりもこちらの商品がおすすめ。ビタミンCの量もこれくらいあれば十分ですし、むしろこれでも多いくらいです。
シナールEXチュアブル錠e
成分量(12錠、成人1日最大量)
成分 | 含量(12錠中) |
---|---|
ビタミンCとして *アスコルビン酸 *アスコルビン酸カルシウム | 2,000mg *1,950mg *60.5mg |
リボフラビン酪酸エステル(ビタミンB2誘導体) | 12mg |
酢酸d-α-トコフェロール(天然型ビタミンE) | 30mg |
投与量
15歳以上には1回2〜4錠を1日3回(アスコルビン酸として1,000〜2,000mg)、7歳以上15歳未満は1回1〜2錠を1日3回(アスコルビン酸として500〜1,000mg)
効能(皮膚疾患として)
・しみ、そばかす、日やけ・かぶれによる色素沈着の緩和
処方薬のシナールと同じ名称の商品ですが、配合されている成分は違います。ビタミンCの配合量は多いので、最大量(12錠)飲まなくてもいいと思います。
ただほかの成分の含有量は少なめなので注意してください。
ビタミンCとほかの成分の量のバランスを考えるとハイシーホワイト2がいい気もしますが、吸収効率を考えると1日3回に分けて飲めるシナールにメリットを感じます。
シナールLホワイトエクシア
成分量(6錠、成人服用量)
成 分 | 含量(6錠中) |
---|---|
アスコルビン酸(ビタミンC) | 1,200mg |
L-システイン | 240mg |
パントテン酸カルシウム | 24mg |
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) | 12mg |
ビオチン | 500μg |
成分量
15歳以上には1回3錠を1日2回(アスコルビン酸として1,200mg)、7歳以上15歳未満は1回1錠を1日2回(アスコルビン酸として400mg)
効能(皮膚疾患として)
・しみ、そばかす、日やけ・かぶれによる色素沈着の緩和
ビタミンEは含まれていませんが、メラニンに対して作用するL-システインや肌の代謝に関与するビタミンB群各種が含まれています。
ハイシーホワイト2とシナールLホワイトエクシアに決定的な違いは見当たりません。好みで選んでいいレベルだと思いますね。
トランシーノホワイトCクリア
成分量(4錠、成人量)
成 分 | 含量(4錠中) |
---|---|
アスコルビン酸(ビタミンC) | 1,000mg |
L-システイン | 240mg |
コハク酸d-α-トコフェロール(天然型ビタミンE) | 50mg |
リボフラビン(ビタミンB2) | 6mg |
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6) | 12mg |
ニコチン酸アミド(ビタミンB3) | 60mg |
成分量
15歳以上には1回2錠を1日2回(アスコルビン酸として1,000mg)、7歳以上15歳未満には1回1錠を1日2回 (アスコルビン酸として500mg)
効能(皮膚疾患として)
しみ、そばかす、日やけ・かぶれによる色素沈着の緩和
ビタミンB2、B6、E全て含まれている以外に、皮膚や粘膜を正常に保つ作用のあるニコチン酸アミドも含まれていてニキビや肌荒れに対しての効果も期待できます。
ビタミンCの含有量が各製剤で違いますが、どこまでこれに意味があるか考えてみたいと思います。
ビタミンCの投与量は?
ビタミンCはたくさん摂取してもあまり意味がないことをこれまでに少し書いてきましたが、実際にはどの程度のビタミンCが適量でしょうか?
ビタミンCの摂取量と血漿濃度の関係のメタ・アナリシスによると、成人が有効と言われている血漿ビタミンC濃度50μmol/Lを維持するには100mg/日のビタミンC摂取が推奨されています。
また毎日100〜200 mgのビタミンCを摂取すると血漿と組織は飽和することも示されています。
ビタミンCの効能を示した前述の論文などには2g/日と大量のビタミンCを投与した報告もありますが、論文の結果やビタミンCの吸収の飽和を考えれば高用量の投与は必要ないと思います。
ただ、美容関連だけでなくがん領域などさまざまな分野でビタミンCの大量投与が行われている現状があります。
ということで少しビタミンCの大量投与について考えてみたいと思います。
ビタミンCの大量投与について
前述したようにビタミンCはある程度のところで吸収に飽和が起きるので、基本的には大量投与しても意味がないと思われています。
ただ大量のビタミンCを体内に届ければ、抗酸化作用などによりがんや皮膚の酸化ストレスから守れるのではないかと考え、あらゆる工夫がされています。
その一つがビタミンCの点滴になります。
高濃度ビタミンC点滴療法
がん治療や美容皮膚科などの自費診療で行われているこの高濃度ビタミンC点滴療法ですが、実際の効果はどうなのでしょうか?
がん領域においては、症例報告などで有効であったという例もあるようですが、しっかりとした臨床試験による結果はなく、まだ効果ははっきりしていません。
皮膚科領域では、重症熱傷の患者さんに大量のビタミンCを24時間点滴することが、治療に有益であるという報告はあります。H. tanaka Arch Surg. 2000 ; 135 (3) : 326-331.
重症熱傷などの酸化ストレスが激しい病態では、ビタミンCの需要が高まりビタミンCの大量投与が有効となる可能性はありますが、この結果だけでビタミンCの大量投与が有効と断言するまでにはいたりません。
私が働いていた病院のICUでも重症熱傷の患者さんにビタミンC大量投与が行われていましたが、「頼む、効いてくれ〜」という感じだったと思います。
まして加齢や紫外線ダメージなどの慢性的な酸化ストレスに対するビタミンCの大量投与の有効性は分からないことが多いです。
美容目的の高濃度ビタミンC点滴の効果に関してほとんどデータはないにも関わらず、多くの美容皮膚科などのクリニックでは広く施行されています。個人的には自費で高額料金を払ってやるには、メリットが少ないと感じてしまうので、その分のお金で効果が期待できそうな美容液をプラスで買ってもいいと思います。
ビタミンCの血中濃度を高めるために、もう一つ美容領域で応用されているのが、ビタミンCのリポソーム化です。飲むだけで高い血中濃度が得られるので、点滴より簡便で、身体への負担も少なくてすむというメリットがあり治療を続けやすいです。
ビタミンCのリポソーム化
リポソームとはリン脂質などの脂質二重層を持つ小胞で、リポソーム中心の水溶液に親水性の薬などを組み込むことで、薬の吸収効率を上げたり、副作用を予防させたりします。
ビタミンCのリポソームカプセルは通常のビタミンCよりも吸収されやすく、血中濃度も高くなります。
とは言っても点滴と比べれば明らかに点滴の方が血中濃度は高くなります。
ただ興味深いことに、いくら血中濃度が高くなっても抗酸化ストレスに対する効果は点滴でも、リポソームカプセルでも、普通のビタミンCでもどれでも変わらないというデータがあります。Davis JL, et al. Nutr Metab Insights. 2016 (20) ; 9 : 25-30.
これはあくまでも一つのデータなので、一概にこのデータを鵜呑みにはできませんが、ビタミンCの血中濃度を高めることにこだわり過ぎず、毎日ビタミンCが不足しないように続けて摂取することが大切です。
高濃度ビタミンC点滴療法やビタミンCのリポソームカプセルが、高いビタミンC血中濃度を提供することは明らかですし、効果を実感されてる方も大勢いらっしゃるので、少しでもビタミンCの効果を高めたい方は、点滴やリポソームを試してください。
もっとも大切なことはビタミンC不足にならないことですので、高濃度ビタミンC点滴やリポソームカプセルの治療に経済的や身体的負担を感じて諦めそうになった時は、普通のビタミンCのサプリメントやOTCでも十分効果は期待できると思って治療を続けてください。
ビタミンC過量投与のリスク
ビタミンCの毒性は低く、高用量を摂取しても重篤な副作用は生じないと考えられています。
最も多く訴えられる副作用の症状は、消化管内で吸収されなかったビタミンCによる浸透圧性の下痢や悪心などの胃腸障害です。
それ以外だと腎機能不良の患者さんでは、腎結石の原因になる尿中のシュウ酸や尿酸の排泄量が増加すると言われていますが、はっきりしたデータはありません。
さらにビタミンCは非ヘム鉄の吸収を増加させますが、基本的にはビタミンCを大量摂取しても過剰な鉄吸収は起きないとされています。
ナショナルアカデミーズ医学研究所の食品栄養委員会は、食品とサプリメントの合わせたビタミンCの許容上限量(UL)を2g(19歳以上)に設定しています。
ULを上回るビタミンCの長期摂取は健康への悪影響のリスクを増大させる可能性があるとしています。
ULは治療のためにビタミンCを摂取している人には適用されませんが、この場合、医師の監督下での摂取が必要となります。
前述したようなOTCにはビタミンCが1日の摂取量が2,000mgまで認められているものもあり、プラスアルファで食事やサプリメントなどを併せると、簡単にULを超えてしまうので注意が必要です。
ビタミンC製剤含有の塗り薬、化粧品
ビタミンC含有の美容液が世の中には溢れていますが、肌に合わないという声を少なからず聞こえてきます。
ビタミンCの化粧品がアンチエイジングに有効であるとい報告が有ります。T Raschke et al. Skin Pharmacol Physiol. 2004; 17(4) : 200-6.
その一方で、食事などで十分にビタミンCが補給されてすでに最適な状態にある場合には、外用後のビタミンCは吸収されないとも考えられています。Marini A. et al. Hautarzt. 2011 ; 62 (8) : 614-617.
少なくとも肌に合わない美容液を無理して使うなら、食事などからビタミンCを積極的には取り入れればいいと思います。
ビタミンCの美容液は何がいいか?ということもあるかもしれませんが、特におすすめしたいようなものはありませんが、あえて言えばクリニックの医師がおすすする美容液がいいと思います。
クリニックで肌に合っているか評価してもらいながら使うことが大切だと思いますので、ビタミンCの美容液を使う場合はちゃんとクリニックに通院してください。
まとめ
ビタミンCは我々の皮膚のハリやシワ、シミなどに対して重要な役割をもつ成分です。
このビタミンCは食事やサプリメント、医薬品などで補うことができますが、できることなら食事から摂取することをおすすめします。
美肌を意識してビタミンCを積極的に摂取することは大切ですが、一方でビタミンCに皮膚のダメージや老化の改善効果を過度に期待することは避けましょう。
適切なスキンケアや紫外線対策などでしっかりと皮膚のダメージを防ぎつつ、ビタミンC不足を配慮した食事をすることが何より大切です。