この記事では、保湿剤として化粧品に使われるセラミドではなく、「飲むセラミド」について本当に効果があるのか、論文などを参考に解説していきます。
セラミドといえば保湿剤などに使われる保湿成分という印象が強いのではないでしょうか?
こちらの記事でもセラミドの保湿剤としての役割について書いていますので参考にしてください。
セラミドは皮膚表皮における角質層の細胞間脂質の約50%も占め皮膚の保湿機能とバリア機能において重要な役割を 担っていることから、化粧品などに配合される美容成分の一つです。
最近では保湿剤以外に、セラミドの保湿やバリア機能を期待したサプリメントも販売されています。
「セラミドってなんでも効果あるの?怪しくない?」
そうなんですよね、個人的にはサプリメントを飲むだけで、簡単に肌のセラミドが増えたり肌の状態が改善するのか疑問がありました。
ということでセラミドのサプリメントについて考えていこうと思います。
セラミドのサプリメント?
そもそもここまで私が書いてきた「セラミドのサプリメント」というものは不適切な表現になると思います。
正確には「セラミドのサプリメント」ではなくセラミドになる前段階の物質のサプリメントになります。
「どういうことですか?」
順を追って説明していくと、
食品中にはスフィンゴミエリンやグリコシルセラミドなどのスフィンゴ脂質と呼ばれる脂質成分が含まれていています。
動物性のスフィンゴミエリンは肉、魚、乳、鶏 卵などに、植物性のグリコシルセラミドは米や麦などの穀類、大豆などの豆類、こんにゃくなどの根菜類、りんごなどの果実類などに多く含まれます。
こういったスフィンゴ脂質は食事から摂取するとセラミドに変換されます。
サプリメントもこういった食品由来のスフィンゴ脂質を抽出して商品化しています。
各サプリメントメーカーはこれらのサプリメントの広告には「飲むセラミド」とか「セラミドの力により保湿力がアップ」と言った表示をしています。
実際にはセラミドではなく、セラミドの前段階の物質、多くは「グリコシルセラミドのサプリメント」であることが多いです。
セラミドの吸収
スフィンゴ脂質が胃や腸で消化、分解されることでセラミドに変化します。
ただこのセラミドがそのまま体内に取り込まれることはなく、セラミドが脂肪酸とスフィンゴイド塩基に分解されてから取り込まれます。菅 原 達 也, 日本栄養・食糧学会誌. 2013 ; 66 (4 ) : 177‒183.
ここで吸収された脂肪酸とスフィンゴ塩基のうちセラミドに再合成されるのはスフィンゴ塩基のみです。
そして食事から摂取してもこのスフィンゴ脂質は他の脂質と比べて、吸収(胃や腸から血液、リンパ液を介して体内に取り込まれること)されにくいことが知られています。
スフィンゴミエリンの場合、セラミドの脂肪酸部分の約60%、スフィンゴイド塩基部分にいたっては10%未満しか吸収されません。
グルコシルセラミドも同様で、脂肪酸部分で20–40%程度、スフィンゴイド塩基部分では 3–4%のみが吸収されるだけです。
運良く吸収されたスフィンゴイド塩基が再度セラミドに合成されてたとしても、数%程度セラミドとして吸収されることになるだけですし、これが皮膚のセラミドの補充として使われる量も微々たるものだと思います。
このことから、スフィンゴ脂質を経口摂取してもそのままセラミドとして肌に補充されることは考えにくいことが分かります。
「ということはセラミドを食事として摂取しても意味がないってこと?」
いやいや、そう思うにはまだ早いみたいです。
スフィンゴ脂質の皮膚への効果
スフィンゴ脂質の骨格成分であるセラミドが保湿やバリア機能に深く関わることから、皮膚疾患モデル動物にスフィンゴ脂質を経口摂取させて、その効果について調査されてきました。
実際、スフィンゴ脂質の経口摂取による改善作用が報告されています。
ただ前述したようにスフィンゴ脂質は吸収されにくいので皮膚に到達し、再利用されている可能性は低いと予想されます。
動物実験ではありますが、スフィンゴ脂質の経口摂取により内因性のスフィンゴ脂質代謝が亢進して、皮膚バリア機能向上する可能性が示されています。Duan J, et al. Exp Dermatol. 2012 ; 21 : 448-452.
スフィンゴ脂質の経口摂取の報告はほとんどがマウスなどの動物実験によるもので、ヒトを対象とした臨床研究はほとんどありません。
唯一の臨床研究はポーラ化成工業株式会社から報告されているものになります。Hirakawa S, et al. Jpn Pharmacol Ther. 2013 ; 417(11) : 1051-1059.
報告内容は以下のとおりです。
乾燥などによる肌荒れを自覚している健常者に、米由来グルコシルセラミド1.8 mgを含む米胚芽エキスを配合した粉末顆粒を1日1回12週間経口摂取させることで、肌の保湿力が改善するといった内容です。
「セラミドは食べても吸収はされないけど、体内のスフィンゴ脂質の代謝が活発になってセラミドが合成されるかもってことね」
仮説ですけどそういうことですね。
スフィンゴ脂質の摂取
スフィンゴ脂質はいろいろな食品に含まれているので、バランスの取れた食事をしていれば問題ないレベルのスフィンゴ脂質は摂取できると思います。
特に多く含まれている食品は?
動物由来のスフィンゴ脂質では畜肉 25–40mg/100g、卵 80–170mg/100g 程度のスフィンゴミエリンが含まれています。
また牛乳100mL には 4–12mgの スフィンゴミエリンと 0.6–1.1mgのグリコシルセラミド、他にも別のスフィンゴ脂質が含まれています。
植物由来のスフィンゴ脂質は穀類や豆類でグルコシルセラミドが10–40mg/100gと他の植物に比べて比較的多いです。
このようにいろいろな食材にスフィンゴ脂質はいろいろな食材に含まれているので、セラミドを意識した食事をしなくても健康的な食事をしていれば、自然とスフィンゴ脂質を摂取できると思います。
そうは言ってもバランスの取れた食事なんて分かってても難しいと言われる方も多いと思います。
そんな時はサプリメントに頼ることもあると思います。
スフィンゴ脂質のサプリメントはたくさんあるのでどれを選ぶか迷うところだと思いますが、個人的には値段を考慮しなければ一択です。
それは…
オルビスのディフェンセラです。
ディフェンセラ(オルビス)
サプリメントは何がいいかということでしたが、ディフェンセラはサプリメントではなく特定保健用食品に分類されます。
前述したようにポーラ化成工業株式会社がスフィンゴ脂質の皮膚への臨床効果を報告しています。
それは先程紹介したポーラ化成工業株式会社の臨床研究です。Hirakawa S, et al. Jpn Pharmacol Ther. 2013 ; 417(11) : 1051-1059.
これはメーカーのホームページでも紹介されています。
オルビスはポーラ系列の化粧品会社ですので、このデータを元にディフェンセラを開発しています。
繰り返しになりますが、内容は以下のとおりです。
乾燥などによる肌荒れを自覚している健常者に、米由来グルコシルセラミド1.8 mgを含む米胚芽エキスを配合した粉末顆粒を1日1回12週間経口摂取させることで、肌の保湿力が改善するといった内容です。
もっと具体的に…。
たとえば頬部。
ディフェンセラを飲み始めて4週間で効果が現れ始め、12週でTEWL値が4g/h㎡程度低くなるという結果です。
ヒルドイドソフト軟膏0.3%を塗布すると5日で10g/h㎡程度低くなるというデータがありますので、それを考えればある程度の効果が期待できるかもしれません。
データを見ると足の裏や背中への効果は頬ほどではなさそうですが、多少は期待できるようです。
注) 経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss:TEWL):
皮膚から蒸散する水分量で、皮膚バリア機能の指標。TEWLが高いほど皮膚バリア機能が低下していると考えられる。
トクホだからといって薬のような効果を期待してはいけませんが、他のサプリメントよりは信頼性は高いと思います。
飲み方は…
1回1包を1日1回 目安に飲みます。
1包(1.5g)あたり米胚芽由来のグリコシルセラミド1.8mgが配合されています。
他には3.3kcalの糖分が含まれているだけなので、余計な成分やカロリーを摂取することもありません。
世の中にはいろいろなスフィンゴ脂質のサプリメントが発売されています。
さまざまな食品由来のスフィンゴ脂質が配合されていたり、ヒアルロン酸やコラーゲンが含まれていたりと何を選んでいいか混乱してしまいます。
注意したいのは「スフィンゴ脂質を飲むと肌にいい」=「スフィンゴ脂質配合サプリメントを飲むと肌にいい」では必ずしもないことです。
ディフェンセラを飲むことは肌にいい可能性がありますが、他の商品に関しては肌にいいのか意味ないのか分からない、というのが正直なところです。
まとめ
飲むセラミドと言われるサプリメント、実際にはスフィンゴ脂質のサプリメントです。
スフィンゴ脂質を口から摂取することで内因性のスフィンゴ脂質代謝が高まり、皮膚バリア機能を向上させます。
スフィンゴ脂質はいろいろな食材に含まれているのでバランスの取れた食事を心がけましょう。
バランスの良い食事が難しい場合は、スフィンゴ脂質の補助食品の中でもエビデンスができるだけある商品を選んで摂取するようにしましょう。
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