この記事では、医薬部外品や一般用医薬品の保湿剤などによく使われるグリチルリチン酸の効果と安全性について解説しています。
医薬部外品、一般用医薬品のクリームなどによく使われるグリチルリチン酸二カリウム。別の記事で紹介しているセラミド配合化粧品や尿素含有の保湿剤、さらには(ヒルドイドで有名な)ヘパリン類似物質の保湿剤の一部にも配合されています。
漢方薬に使われる甘草の有効成分であるグリチルリチン酸は古くから、抗炎症作用や抗菌作用、抗酸化作用があることが知られています。
医薬品ではグリチルレチン酸(グリチルリチン酸のアグリコン、簡単に言うと活性体)としてデルマクリンクリームなどが使用されています。
一部商品のPR文章には「副作用はなく、炎症作用や痒み止めなどの効果がある」とされています。
逆に別のサイトなどでは「グリチルリチン酸はステロイド外用剤と同じで副作用やリバウンドがあります」と書いてあります。
いったいどちらの情報を信じれば良いのでしょうか?
ちょっと掘り下げてみましょう。
表記
グリチルリチン酸二カリウムは化粧品と医薬部外品で表記が異なるので注意が必要です。
化粧品:グリチルリチン酸2K
医薬部外品:グリチルリチン酸ジカリウム
それぞれ表記は違っても同じ成分です。
こういった表記があれば、グリチルリチン酸が使われていると思ってください。
効果
抗炎症作用、鎮痒作用
ヒスタミン遊離抑制作用、ホスホリパーゼA2阻害作用、サブスタンスPの効果を阻害による。
グリチルリチン酸が効果を発揮するには、配糖体のグリチルリチン酸から糖がはずれたアグリコン、すなわちグリチルレチン酸に変換されることで体内に吸収され効果を発揮します。
「なんか難しいんですけど…」
つまりグリチルリチン酸がグリチルレチン酸になると抗炎症作用の効果があるということですね。
処方薬の塗り薬として効果が保証されているのは1〜2%の濃度。
医薬部外品はその濃度より薄いから効果は弱い。
あくまでも痒みを抑える程度でアトピーなどの皮膚炎を治せるわけではないので、痒みが治ったら中止しましょう。
接触性皮疹などの副作用は低い濃度でも十分起こりえることですので注意は必要です。
しっかり効果のある濃度の商品を使って、短期間で治療することを心がけましょう。
ちなみに肌荒れ防止効果などとして痒みや炎症の予防目的で、日常用の化粧品にグリチルリチン酸が含まれていることが多々あります。
ただグリチルリチン酸に予防効果があるかは分かっていません。
特に、化粧品や医薬部外品など医薬品より低い濃度での予防効果はまったく不明です。
あえて炎症が落ち着いているときにまでグリチルリチン酸の商品を選ぶ必要はないと思います。
副作用
医薬部外品、化粧品であっても「副作用がない」なんてことはあり得ません。
食品だって食べ過ぎたり、正しく調理しなければ身体にダメージを受けます。
医薬品だろうが化粧品だろうが、適切に取り扱わなければ副作用は起こりえます。
「副作用がない」と断言して宣伝するような商品には十分注意してください。
全身性の副作用
グリチルレチン酸は間接的に生理的副腎ステロイドホルモンであるコルチゾールを増加させることが知られています。
グリチルリチン酸の皮膚への使用により、ステロイド様の全身性の副作用を心配する声も一部にあります。
その中で最も有名なグリチルリチン酸の副作用に偽アルドステロン血症(疾患の説明は割愛します)があります。
ですがこの副作用はグリチルリチン酸として1日あたり100〜200mgくらいはの経口摂取したときに起こりうるリスクです。
厚生省はグリチルリチン酸の1日最大配合量を原則として200mg以下に設定しています(短期使用を除いて)。
ではグリチルレチン酸を表皮に塗布したとして、体内にはどの程度吸収されるのでしょうか?
グリチルレチン酸が真皮までの浸透する割合は1%前後のみです。Sakata O, et al. Biol Pharm Bull. 2014.
仮に1%のクリーム1g(グリチルレチン酸10mg)塗布したとして真皮まで吸収されるグリチルレチンの量は0.1mg程度。
そこから体内に吸収されるのはさらに少ないはずです。
基本的にはグリチルレチン酸を塗布するだけなら余程、全身性の副作用は心配ありません。
ただし皮膚炎で炎症している部位は透過性亢進しているので、吸収率は上がってる可能性が高いので注意が必要です。
さらに漢方薬を飲んでいる人も注意が必要です。
漢方に使われるカンゾウにはグリチルリチン酸が含まれています。
カンゾウ2.5gにグリチルリチン酸100mg含まれているので、簡単に1日の最大量に到達してしまいます。
漢方を飲まれている方はカンゾウが何g含まれているか確認してください。
局所性の副作用
医薬品であるデルマクリンクリームなどの添付文書(説明書のようなもの)には、副作用として過敏症があると記されています。
またいくら低濃度のグリチルレチン酸を塗布したとしても、皮膚の刺激、過敏症状などは起こりえるので注意してください。
実際、石鹸やシャンプーに含まれるグリチルリチン接触性皮膚炎やアナフィラキシーの事例が報告されています。
もしこのような症状が現れた場合は使用を中断して医師や薬剤師に相談してください。
それ以外の副作用はあまり知られていませんが、リバウンドがあると言われています。
リバウンド
リバウンドは薬を突然中止することで、症状が悪化することで離脱症状といわれています。
一般的に副腎ステロイドホルモンを長期間使用しているほどリバウンドのリスクは高くなります。
では皮膚に塗ったグリチルリチン酸でも副腎ステロイドと同じような結果は起きるのでしょうか?
一部のサイトではグリチルリチン酸のリバウンドのリスクがあると書いています。
ただ、私が論文を調べてみたかぎり、グリチルリチン酸や甘草のリバウンドついての研究は見つけられませんでした。
論文がないからといってグリチルリチン酸のリバウンドが無いとは言い切れないですが、少なくともリバウンドを心配し過ぎる必要もないということは明らかです。
痒みや炎症なら症状がないのにあえてグリチルリチン酸含有の化粧品や医薬品を使う必要はありませんが、副作用を心配し過ぎることもないでしょう。
日常使いの保湿剤にグリチルリチン酸が含まれていることもありますが、痒みの予防や軽い痒み症状なら保湿でも十分です。
グリチルリチン酸が含まれた商品は炎症や痒みがあるときに使うようにしましょう。
もし使う場合はしっかりした濃度のクリームを使って改善すればできるだけ早くやめるようにしてください。
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